PEDAL TO METAL !!

　皆様におかれましては、人間界では考えられないような科学の域を超越した力の及んだ品物を見たことがおありでしょうか？

　有名なところではキリストの聖杯や徳川家の妖刀村正、アーサー王のエクスカリバー等がそのような部類に上げられると思います。
　総称してアーティファクトと呼ばれたりしますが、ほとんどは、伝説、伝承による誇張、噂、迷信等のたぐいの産物だと考えられます。

　が、名工と呼ばれる人物が鍛えた武具や超人的な才能を持った芸術家等が生み出した作品には不思議な力が宿っていてもおかしくないような気がするのは、脆弱な人類の性が見せる幻なのでしょうか？

　けれども、もし、あなたが釣り人ならば･･･
　有り得ないと思っていながらも･･･
　一撃必中で魔法のように大物が掛かる疑似餌や、それを絶対に釣り上げられる竿があったとしたら、誰しも一度は使ってみたい衝動に駆られるのではないでしょうか？


　たとえ、呪われたとしても。。。




　それは、とある遊漁船が欠航となった釣り旅の中日。
　海は大時化だと言うのに不思議なほど陸は晴天で、朝から豆腐の比嘉へKOBAちゃんと豆腐そばを食べに行った時の事。
　そこでishidaさんがヤフオクで落として島に持ち込んだ竿の事が話題になりました。
　｢ishidaさんが買った竿なんですけど、高弾性系でガンガン（カンパチの）スイッチ入れれそうな雰囲気ありありなんですよね～。ま、（竿を）立てたら折れそうではありますが～。名前がデーモンなんですよ～！DEMON！！でも、どっちにしてもガイドがね～。｣とKOBAちゃん。
　で、KOBAちゃんの部屋に戻ってその竿を手にとって見ると、なんと今時ガイドリングが金属製。
　アルミ製のような感じに見えましたが、何れにしても明らかに摩擦係数も放熱性も悪そう。それでishidaさんはKOBAちゃんにガイドを交換してもらおうと預けたらしいのです。

　「どうですか～？良い感じでしょう！？」

　軽く振ってみて、天井に当てて調子を見る。かなり細身のブランクスは確かにかなり張りがあり、6fの割には軽い。
　にしてもその外観。黒ベースのブランクに金色のファイヤーパターンの塗装。そしてガイドフレームも金色。セパレートグリップは最近流行のゴム素材が入ったコルク製。リールシートは恐らくアルミだと思われますが見た事もないような形で、ダウンロックのナットにはクロムハーツ風の毒々しい紋様が施されています。その上には、まるでズゴックの爪がバット部分を摑んでいるかのようにフォアグリップ部分から伸びたワインディングチェック。そしてそのバット部分に刻まれた、DEMONと言う文字。JIG MAXは350gと印されています。とどめはグリップエンドに付けられたバランサーのような金属プレート。そこには明らかにDEMONを著したと思しきレリーフが･･･。
　一瞬その目が赤く光ったように感じたのは気のせいでした。

　「何処の国製なんだろうね～。」
　「確かにカンパチ食いそうだね～。」
　などと他愛もない話をしながら、そんな竿の事はすぐに忘れてしまいました。

　その夜、白保のすき焼きパーティに招かれ、ほろ酔い加減で帰って来て、明日の釣りも準備万端で終えた午前0時も過ぎた頃、ふと昼間に触った竿の事を思い出しました。
　万一リールが壊れた時の予備用に持ってきたソルティガDFも黒金の色目なので、あの竿に付けたら似合うと考えたのです。　　ちょっと気になって実際に装着して見たところ、あまりに見た目の相性が良かったので明日持って行く事に決めました。ラインも4年以上前に巻いたモノで、別に痛んで構わなかったので丁度良かったのです。
　そこで、念のためにリールをしっかり固定しておこうと思いリールシートのナットを増し締めしようとしたのですが、、、ナットを回しても回しても完全にロックされずいくらでも締まっていくのです。で、もう一度リールを外して付け直そうとナットを緩めましたが、今度は金属のリールシートにDFのリールフットが完全に食い込んでしまって外れません。ま、外れ難いのだったら良いかと締まりき切らないナットを締め直して明日に備えて寝る事にしました。
　ふと時刻を見ると午前3時。まさか、そんなに時間が経っているとは思いもしませんでした･･･。

　翌朝、KOBAちゃんに「DEMONも持って行くわ～！」と言って港まで運んだのですが、その日は7名乗船だった為に船に持ち込む竿の量が大変多くなったので邪魔になると思い、結局、車にDEMON1本だけ残して出港する事になりました･･･。

　バイク親父さんと初めてお会いし、朝焼けの中ポイントまでしばし歓談。
　本日は180mラインからスタート。
　パグロでシャクると1投目でヒット！
　｢神（が降臨）ですね~！！｣と操船席2FからKOBAちゃん。
　コカンパチを即水揚げ～。
　2投目、連続ヒット～！
　周りのみなさんも竿を曲げてらっしゃいます。
　その後何本か釣れ続いた後、KOBAちゃんが
　「今のは肩慣らしで～す！次、大場所入りま～す！」
　
　そこでOUT LAWに持ち替え、ナガマサ400gをフォールさせていると･･･んっ?着底しない、、、よく見るとスプールの回転が加速している！フォールで食って走ってたか～！？とフッキング！
　が、時既に遅し。魚はそのままの勢いで走り続け、ドラグを引きずり出して根まで直行･･･。リーダーズダズダでブレイク。
　すぐにパグロに持ち替えてジグを落とすと･･･またもやフォールで食ってる事に15秒ほど気付くのに遅れ、先ほどと同じ感じでリーダーブレイク。。。
　しかし、なんとここまで5投連続ヒット！！まだまだ女神降臨継続中！！

　この時、なぜか背中がフッと軽くなったような気がしたのですが、船が揺れたせいだと思い気にも留めませんでした。

　が、その後･･･なぜか、夏以来かなりのヒット率を誇った自分に当たりがパッタリと来なくなりました。
　シャクリのタイミングを変えても、ジグを変えても、いつもより頑張って上までシャクっても、殺気を抑えて無我の境地に入っても、な～んの反応もないのです。。。

　周りはヒット！ヒット！の声の嵐。
　船中7名中自分以外の6名全員の竿が曲がっている時でさえ自分のジグにはカスりもしない。。。
　そんな時、ガンっと久々に当たりが！
　「KOBAちゃん、今当たったよね～！」
　『え？なんですか～？』
　「だから久々にバイトが。」
　『いや、MAOさんの竿はもう見てませ～ん。全く釣れる気配がないですから。完全に背中からオーラが消えてま～す♪』
　(゜o゜；)！？
　そんな非科学的な事があるはずがないっ！釣りは理論だっ！とばかり懸命にジャークしますが、その後も全く音信不通･･･。

　結局カンパチはそのまま終了し、五目ポイントへ。
　待ってました！本遠征初の五目！気分も変わって丁度良いぜ！
　と、意気揚々にShuさんに塗ってもらったKOBAジグを落とします。
　即効バイト！が乗らず。再フォール。即効バイト！！が乗らず。。。
　周りはヒットしまくりで大盛り上がり。
　くそぉ～。
　
　ま、絶対何か釣れるだろと、まだまだ余裕で再々フォール。着底してジャークしようとした時、なぜかラインが船縁側に急角度で入り出し、あれれっ？と思っている間に船底に擦れて1.5号200m新品ラインが高切れ。

　しかしまだまだ諦めず、手を変え品を変えて攻めまくるも、その後も全く当たりなし。まるで近海の超低活性時に釣りをしているような感覚に陥る･･･。
　周りはもちろん入れ食い。
　
　「KOBAちゃんどうなってんの？」
　『え～？何ですか～！？』
　「いや、何で俺だけバイトないのかな～と思って。」
　『そりゃMAOさん、DEMONですよ。MAOさんはDEMON閣下で～す。』
　「え？女神は･･･？」
　『そんなもん、とっくに飛び去ってますよ。完全に入れ替わってま～す♪』
　((((゜д゜;))))！？

　もちろんここには俺の姿はない。。。

　ishidaさん、自己最大カンパチおめでとうございま～す！！









　もちろんここにも･･･。












　ALBATROSS常連の方は、なんとリーダー16lbでイソマグロ10kgクラスを水揚げ～！
　自分とえらい違いじゃ･･･。

　右はバイク親父さん♪












　結果は･･･。

　大漁！！

　俺以外は･･･。



















　翌日。

　魚の梱包をしに港へ。

　美しきかな大洋丸。








　帰りの空港に行く途中、Morinagaさんのご宿泊されていた宮良のペンションでしばし休息。
　目の前がマングローブの小川･･･。

　癒される･･･。

　本気でこんな所で生活してみたいと思いました･･･。


　次回、石垣入りするまでに憑き物が落ちますように。